<いつか帰るところ>




意識が闇に堕ちて行くのは知っていた。
肉体が温もりを喪っていくのも判っていた。
そして、その体…魂を失った、ただの肉の塊にしか過ぎない空の器…を掻き抱いて、嘆くひとがいることも、知っていた。

魂が肉体から切り離されたとき、融け合っていた魂が引き裂かれるのを感じた。
行かないで行かないでと、嘆き哀しむ声が聴こえた気もした。
だが自分の魂は…精神は、見えざる『何か』に引き寄せられるように、慣れ親しんだもうひとつの『自分』から、 引き離されていく。

辛くなかったと言えば嘘になる。
だが、自分の全て…自分の魂、精神が、彼の魂に溶け込んでいるのを知っていたから、 追い縋る声に耳を塞ぎ…『自分』は差し出された『手』を取った。
意識は闇の中から光の中へ。
そこで、全ての記憶を失った。
そのはずだった。



季節が巡り、歳月が巡り行き…
もう『自分』が何であったか、誰であったかも忘れかけている時に。
自分の魂は、新たな器を得た。
久し振りに帰る気がする、肉体の中へ。

遠い昔、人間の肉体の中で暮らしたこの魂は、再び人間の姿として、新しい命を得るのだろう。
それはかつての許嫁の胎の中から。
そして、かつての『魂』を共有した彼と、『新しい自分』を産んでくれる彼女の間の子供として。

かつての記憶は、生まれ落ちたその時には、失っているかもしれない。
けれども、この魂に刻まれた記憶は…両親である彼らなら、きっと解ってくれるだろう。
それを信じて、暖かな波の中で、ひとときの夢を見る。

いつか、帰るところの夢を。


------------------------------


こういうネタばかり書いている気がして来ました…(苦笑)。
ちなみに、新しく生まれて来る時の両親は、あのふたりということで。その辺りは、二次創作お約束の捏造ですが。
しかし、魂そのものは変わらないような書き方をしてしまったので…生まれた時の顔は、やはり「生前」と同じ顔なのかも しれませんね。
結構適当に誤魔化しておきます…(笑)。

ちなみにタイトルの元ネタは…FF9です。

(2006年05月14日)







<インデックスページに戻る>